事業仕分け」の件ですが.
ま,家にはお金がないのよ,というときになんでもかんでも出せるわけでないことは当然でしょう.また,いまや随分複雑になった科学研究費補助金制度を,ある程度整理するのも悪くない話だと思います.しかしその削減対象が「若手研究」になるのはなぜでしょう.財務省は「ひとりで10種類以上のファンドを受領している例もあり,,,」と指摘しているけれど,それは若手研究(B)なんかをもらっている人たちには関係ない話だと思います.この件を含めて,そもそも何が「事業仕分け」の対象になり,何が対象にならないのか,そこのところに随分バイアスがかかっている気がします(ちなみに,私はもう「若手」ではありませんが).若手支援の話じゃないけれども,理研にしても,数多ある中で植物科学が槍玉にあがったのはなぜか?他にもっと大規模な予算を使っているところはあるでしょうに.
標的の選び方に加えて,実際の仕分け会議でのやりとりも,現状が正しく認識されていないなぁと思う点が多いです.若手研究者育成を例にとれば,学術振興会の「特別研究員制度」については「ポスドク生活保護のようなシステムはやめるべき」「雇用対策のようなもの」というコメントがついています.学振PDやSPD生活保護ね... 私はかつて大学院生のとき特別研究員には採用してもらえませんでした.またウチのラボにもいま特別研究員はいません.ですので私も彼らの生活の実情を生で見ているわけではありませんが,感覚としては,特別研究員PDとかSPDは相当に狭き門であり,他に職が得られないから学振をもらうしかない,てなものではあり得ないです.それでも今回の仕分け人の意見だけが報道されれば世間的にはデモシカ学振研究員というイメージが定着してしまうでしょう.それはポスドクや博士課程学生のプライドを大きく損うものだと思います.
それでも,総額としてお金がないのであればどこかを減らさざるを得ないわけで,科学技術関連の予算が減ることも仕方がないとは思ってます.問題は「どうしたいのか」が政権から全然発信されてこないことです.科学技術政策やこの国のアカデミアのあり方をどうしたいのか,そのためにどういう予算配分をするのか,について方針が提示され,かつそれに賛成できるなら,ニホンの研究者は多少の不自由は「工夫」と「カイゼン」でしのいでいくと思うんですけどねぇ.現状では残念ながら,総理のコメントにしても予算をどうするかという話しかないみたいです.
金だけの問題じゃなくて,プライドの問題も大きいと思うんですがね.