今日の小理屈

役に立つ研究とは何か。こうするとコメの収量が増えます という話なら説明もしやすいし、実際そんな研究ならばやってて楽しくて仕方があるまい。しかし今やっているのはそういう類の仕事ではなく、はっきりいって、どう役に立つかは自分でもわからない。でも植物の細胞生理の理解に貢献するなら、いずれは何らかの形で役に立つこともあるだろう。ガルバニがカエルの足をぴくぴくさせていたときも、まさか今日のエレクトロニクス全盛を予想することはできなかった筈だ(もっともガルバニは筋肉の収縮機構という「役に立つ」研究をしようとしたらしいが)。例えばガルバニにしてそれならば、ましてワシの脳ミソ程度では今やっていることが将来何にどうつながるか等見通せるはずもない。だからまあ先のことを云々するより今の仕事をちゃんとやったらいいという言い訳だし、「将来」がやってくるまでの時間はだんだん短縮されているだろうとも思う。
かつて「植物バイオ」の夢が語られ、様々な企業がこの分野に参入したが、今にして思えば当時の生物・細胞に関する知識レベルでは「テクノロジー」なんて無理だった筈だ(そして今でも大して変っちゃいない)。そのトラウマがあるから植物の細胞生理研究なんて役に立たんよと思いがちだ。でもこの先はどうだかわからない。断わっておくけれどもテクノロジーとは遺伝子組換えだけを意味するのでなくて、例えばどう肥料をやるとよいかてなことも含む。では施肥技術の向上にどう貢献し得るかといえば、従来はインプットを増やすことで収量を確保する、いわばパワープレイで来たけれど、今後はそうもいかない。むしろ与えたものを有効に利用させるefficient & intelligentな方法を開発していく必要があり、そのためには供給先である草のことをもっと知ることが大事と、そんな理屈はどうだろう。
今日はそんなことを考えつつ、役に立つかどうかわからない論文を綴っている。